90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の神経科学に関する論文集vol.7

Music for pain and anxiety in children undergoing medical procedures: a systematic review of randomized controlled trials.
Ambul Pediatr. 2008 Mar-Apr;8(2):117-28.
Klassen JA, Liang Y, Tjosvold L, Klassen TP, Hartling L.


タイトルそのままですが、病院で何かの治療を受けているときの子供の不安や痛みに対して、
音楽が与える効果についてのメタ分析を行ったレビューです。393の論文と4000個以上の
引用文献から、対象が子供(生後1ヶ月〜18歳)で、音楽を使って彼らの痛みや不安を
対処しようとした研究で、かつランダム化や条件のコントロールがしっかりとしたものを
探したところ、19の研究が残りました。


方法論的な面から見ると質の低い研究も多かったものの、概して音楽は子供達の不安や
痛みを軽減する効果がある、という傾向が見られたようです。こうした事から、例えば病院や
歯医者などで子供に対して痛みや恐怖を与えそうな治療を行う場合には、一緒に音楽を
聴かせてやるといいかもしれません、という結論です。


たぶん一番効果的なのは「子供の好きな音楽」なんでしょうけど、いわゆるヒーリング系の
音楽とかクラシックとか、そういうものでも効果あるんでしょうか。





Effect of music therapy on anxiety and depression in patients with Alzheimer's type dementia: randomised, controlled study.
Dement Geriatr Cogn Disord. 2009;28(1):36-46. Epub 2009 Jul 23.
Guetin S, Portet F, Picot MC, Pommie C, Messaoudi M, Djabelkir L, Olsen AL, Cano MM, Lecourt E, Touchon J.


認知症患者に対する音楽療法の研究はおそらく山のようにあるでしょうが、この論文は
"the validated U technique"という新しいやり方でやってみました、というものです。


アブストラクトにはどんな方法なのか書いてないですが、アルツハイマー型の認知症
患者に対してこの方法で音楽療法を行ったところ、不安尺度(Hamilton Scale)や
高齢者うつ病尺度(GDS)の点数が良くなったということです。でもほかの方法との
比較をしている様子はないので、研究としては片手落ちというところでしょうか。





Effects of music on anxiety and pain in children with cerebral palsy receiving acupuncture: a randomized controlled trial.
Int J Nurs Stud. 2009 Nov;46(11):1423-30. Epub 2009 Jun 3.
Yu H, Liu Y, Li S, Ma X.


脳性まひとは、出生時などの脳への外傷や、感染症やその他炎症が元で
脳内の運動制御を司る部位が障害を受け、けいれんや麻痺が起こるものです。
この症状の治療は不可能と言われていますが、それでも手術や投薬、さらに
鍼治療などによって多少なりとも症状が改善する事もあるようです。


この論文では、脳性まひの子供たちへ鍼治療をする際に音楽を聴かせることで
子供たちの不安や痛みを減らせるか、という事を調べました。さすがに自分の
体に鍼を刺すというのは怖いでしょうし、痛いでしょう。結論から言うと鍼に対する
不安は減るものの、感じる痛みはあまり減らせなかったようです。とはいえ、
子供たちの不安を減らすのも大事なことなので、治療時に音楽を聴かせるのは
いい事だという結論です。