90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の神経科学に関する論文集vol.11

Performed or observed keyboard actions affect pianists' judgements of relative pitch.
Q J Exp Psychol (Colchester). 2009 Nov;62(11):2156-70. Epub 2009 Apr 7.
Repp BH, Knoblich G.


視覚情報が行動に影響を与えるという「サイモン効果」があります。例えば、「右」「左」と
いう画面の指示に従って左右のキーを押すという実験において、文字を出す位置を
上下左右に変化させます。このとき画面右側に「左」を提示すると、誤って右のキー
を押す確率が高くなるというものです。ストループ課題と似たような感じでしょうか。


この研究では、聴覚情報を使ってその効果が見られるかを調べました。キーボードの
左右に配置した2つのキーを押すとそれぞれ違う高さの音が聴こえるような状態で、
音程変化の向き(上昇か下降か)を答えてもらったところ、キーを「左」→「右」と
押した場合の方が「右」→「左」と押したときよりも「音程が上昇した」と答える率が
高くなったということです。非音楽家よりもピアニストの方にその傾向は強く見られ、
またピアニストは自分でキーを押す場合だけでなく、他人がキーを押すのを見ているだけ
でもその傾向が見られたということです。




Congenital amusia: a short-term memory deficit for non-verbal, but not verbal sounds.
Brain Cogn. 2009 Dec;71(3):259-64. Epub 2009 Sep 16.
Tillmann B, Schulze K, Foxton JM.


失音楽症(Amusia)は、後天的な脳の障害によって各種の音楽能力が障害された状態を
指し、先天的にその状態にある患者をCongenital Amusiaと呼びます。この研究では、
その先天性失音楽症の患者さんの記憶力を調べました。ピッチ、音色、単語の
記憶テストを行ったところ、単語は問題なかったものの、ピッチと音色についての
成績は健常者よりも悪かったということです。




Driving error and anxiety related to iPod mp3 player use in a simulated driving experience.
Percept Mot Skills. 2009 Aug;109(1):159-67.
Harvey AR, Carden RL.


車を運転中の携帯電話は数年前に禁止されましたが、そのときの理由の一つが運転に
集中できなくなるから、というものでした。けっこうテレビでもニュースになっていた
ような気がするんですが、実際にどれだけ危険かを検証した番組ってあったのでしょうか。


この研究は携帯でなく、携帯音楽プレイヤーを聞きながらの運転がどれだけ運転ミスを
誘うか調べたものです。iPodを聞きながらドライブシミュレーターで運転テストをして
もらったところ、聞かない場合よりも道をはずれたり接触事故を起こしたりといった
運転ミスをする回数が多かったそうです。


携帯電話以外でもけっこう注力散漫になる行為はあります。以前高速を走っていたとき、
同乗者と話しながら運転していて危うく分岐点の真ん中に突っ込みそうになりました。
皆様も運転にはくれぐれもお気をつけください…