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90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

エセ科学が広まるのは、研究者だけの責任でしょうか。

男脳・女脳ブームに透けて見える「排除の論理」
(日経ビジネスオンラインより)


「大「脳」洋航海記」さんがブログで紹介された記事ですが、遙洋子さんというタレントが
男女の違いをテーマとしたテレビ番組に出演して思ったことが書かれています。

おなじみの地図が読めない女と空間認識力のある男。
システマチックに言葉を扱う男と感情の波で言葉を扱う女。
数々の男女差が科学者によって脳を根拠に解説されていった。


光景が目に浮かぶようですが、男女に違いがあることを示す、というのが
気に入らなかったようです。

わざわざ脳を科学してまで男女の違いを証明されなくても、男女が違うことなど
全員知っている。それをことさら脳を持ちだしてまで証明したいその目的はなにか。
そこには“あらがえなさ”を印象づけることで性差を際立たせたい人間の未必の
故意があると思えてならない。

男女の脳は違う、と声高に訴えたい人はつまり、男女にはあらがえない差があると
いうことを訴えたいのである。 つまり、「女は女の領域にいろ」と暗黙に主張したい
人にとって都合のいい言葉が、「男女の脳は違う」なのだ。


脳科学をネタにしてますが、結局はジェンダー論を一席ぶちたかっただけ、というオチでした。




「脳科学への不信感が書き立てられていた」点を大「脳」洋航海記さんは問題視されて
いますが、私はむしろ、こうしたサイトで文章がかけるくらいには有名な人でも、
そして東大の大学院で勉強したらしい人でも占いと科学を区別することができないと
いう科学リテラシーの低さに驚きました。科学には再現性が担保されているという事さえ
知っていれば、そんな疑問浮かばないだろうに。
(深くツッコむと色々疑問も出てくるかもしれませんが…)


例えば、「言語は左脳、音楽は右脳」という説がありますが、元々これは特定の条件下で
言語刺激と音楽刺激に対する脳活動を測定したら、言語刺激は左脳優位で、音楽刺激は
右脳優位で活動が見られた、という研究結果に基づいています(たぶん)。
研究者が発表する段階では決して言語=左脳で音楽=右脳、とは述べていません。しかし
それが世間に広まっていくうちに、「なんか細かいこと言ってるけど、よくわからんねぇ。
要するに言語=左脳で音楽=右脳なんだろ」といった感じで端折られて今に至るのでは
ないでしょうか。


いくら研究者がマトモな研究成果をメディアで発表したとしても、受け取る側の知識の
低さが原因で歪んだ形で伝わってしまう、という面もあるとすれば、我々研究者は
どうやって脳科学への不信感を払拭すればいいのでしょうか。エセ科学の蔓延に対する
研究者の無策を批判する発言はよく見ますが、情報を受け取る側の科学リテラシーの低さ
を危惧する発言はあまり多くないように思います。


我々研究者の成果を役立てられるのは研究者だけではありません。むしろ研究者以外
の方が有効に役立てられるのではないでしょうか。よく言われるように税金を使って
得られた研究成果なのですから、正しく理解して利用していただきたいものです。