90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽教育が子供の発達に与える影響

Neuroscientist: Think twice about cutting music in schools.
(EurekAlert!より)


American Association for the Advancement of Scienceという会議で、音楽教育が
子供の発達に与える影響についてのトークがありますよ、というニュースです。


トークを行うのはノースウェスタン大学のNina Kraus博士で、彼女は言語/音楽知覚と
学習による脳の可塑性について研究をしています。事情はよく分かりませんが、K-12
呼ばれる幼稚園から高校までの年代の学校教育において、財政難から音楽教育が
減らされる傾向にあるらしく、彼女はこれまでの研究によって分かってきた、音楽教育を
行う事のメリットについて話すようです。


彼女のラボからは、音楽教育によって聴覚野などの大脳皮質だけでなく脳幹のレベル
でも変化が起こることや、その変化が音楽だけでなく言語音に対する脳活動にも見られる
ことが報告されています。また音楽家は、カクテルパーティ効果のような背景雑音の中の
音声を拾うときにも高い感受性を示すことも報告されています。


彼女たちの研究は音楽教育が単に音楽を聴く能力を上げるだけでなく、言語の獲得にも
良い影響を与えることを示しており、財政難だからといって音楽を学校教育から減らして
いくことは子供の認知機能の発達という観点からはマイナスの効果を与えてしまうだろう、
と考えられます。


どこの国でも財政難は大変ですが、昔どこかの首相が言った「米百表」の精神を
忘れないで欲しいものです。