90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の脳科学に関する論文集 vol.23

先週からは朝から夕方まで実験で、更新する心の余裕がありませんでした。
もっと日本語のように英語が話せたらラクなんでしょうが。
PubMedのメールアラートも面白いのがなかったし…と言い訳を。




Musical and verbal semantic memory: two distinct neural networks?
Neuroimage. 2010 Feb 1;49(3):2764-73. Epub 2009 Oct 23.
Groussard M, et al.


意味記憶というのは、辞書の項目のように"知識"として覚えている事柄のことを
言いますが、これに関する研究は当然ですが言語を用いたものがほとんどでした。
この研究では、音楽に関する意味記憶を「memory for "well-known" melodies
without any knowledge of the spatial or temporal circumstances of learning」と
定義し、言語と音楽に関する意味記憶の脳内メカニズムを調べました。


音楽に関しては左半球のSuperior temporal area とInferior/Middle frontal areas、
右半球のInferior frontal areaに活動が見られた一方、言語に関しては左半球の
Middle temporal region と 右側 Cerebellum に活動が見られました。どちらの刺激でも
左半球の活動が見られた事から、ある程度同じような処理過程を経る事を示唆して
いますが、音楽の方がややanterior側にずれていることから、トノトピーのように
関与する部位が分かれているかも、という結論です。


課題では、あらかじめ予備実験で"知っている"と答えた率が高いメロディを
刺激として使い、歌詞がすぐに思い出されるものや個人的な記憶とつながりが
ありそうなもの(結婚行進曲とか)は除いているんですが、それにしても言語で
言うところの"意味記憶"とは違うような…