90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

Patel博士のインタビュー in New York Times

Complex nonlinguistic auditory processing?
(Music Mattersより)

毎月1度くらいの低頻度更新でおなじみのMusic Mattersから、New York Times
載ったAniruddh D. Patel博士のインタビューが紹介されています。


Exploring Music's Hold on the Mind
New York Timesより)

Patel博士はハーバード大学で博士号を取った人ですが、最初にやっていたのは
アリのフィールドワークだったそうです。それだけでも驚きですが、彼はそれを
研究している途中でこれは自分に向いていない事に気がつき、指導教官に相談
したところ、反対するどころか逆に"You must follow your passion. 〜"と背中を
押してくれたのだそうです。素晴らしいですね。


そしてインタビューの後半では、以前のブログでも紹介しましたが、音楽に
ノリノリなオウムの研究についての話題が書かれています。これは動画が
面白いというだけでなく、人間以外に音楽に合わせて踊る動物が初めて報告
されたという点で、何気に重要なんです。



同僚がYouTubeで踊るオウムを見つけたという話から、「Let’s design an experiment
to see if this is real」と実験してみるまでの流れが、なんとも日本とは違うなぁと。
日本なら絶対に「仕事中にYouTubeなんて見るな!」と怒られて終わりでしょうが、
さすが優秀な研究者は違うといったところでしょうか。


そしてインタビューの最後は、これまでの音楽認知の研究がどれだけ大変だったか
衝撃的な事実を教えてくれています。この業界の大御所Robert Zatorre博士ですら
10年前には研究費に応募する際に「music」という言葉を使わず「complex nonlinguistic
auditory processing」と書いていたそうです。なんでも、musicという単語を使うだけで
それは科学ではないと自動的に落とされていたんだとか。


そんな偉大な先駆者の苦労があって今の現状があるんですねぇ。
まさか日本では未だにそんな事があったりするんでしょうか(汗)


私も今度日本の研究費に応募する際には、「音楽」ではなくて
「非言語的聴覚刺激に関する〜」みたいな感じで書いてみようかしらん。