90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の脳科学に関する論文集 vol.36

A filled duration illusion in music: Effects of metrical subdivision on the perception and production of beat tempo.
Adv Cogn Psychol. 2010 Jan 13;5:114-34.
Repp BH, Bruttomesso M.


この論文の著者のReppさんは音に合わせたタッピング課題を使って
Synchronized actionのメカニズムを調べている方で、毎年何本も
いいジャーナルに精力的に論文を出しているかなりすごい人です。
というか、今年だけで筆頭著者ですでに5本出ていて3本がin pressって
どういうこと??


この論文は、音列の間に余分な音を挿入することで音列のテンポ感が
変わるという、以前に彼が報告した錯覚について詳しく調べたものです。
研究所で彼のセミナーを聞く機会があり、その時にもデータを披露して
いたのですが、この錯覚は例えば1秒ごとにピッと鳴る音列で感じる
1秒の長さよりも、0.5秒ごとにピッピッと鳴る音列で感じる1秒の方が
長く感じるというものです。


合計6つの実験を行って、この錯覚が音楽経験に関わらず生じること、
音のテンポに合わせたタッピングを行うとき、この錯覚によって音列間の
インターバルが長いと感じる分、それを補うようにタッピングのタイミングは
逆に早くなること、また実際の音楽を刺激として使っても錯覚が生じること
などを示しています。




セミナーでこの話を聞いたとき、だから細かいフレーズを演奏するときに
ついつい速くなってしまうのか、と納得しました。


弾けなくて焦ってしまうからでは決してないハズ(笑)