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90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽を通じて世界を変えようとした話

第二次世界大戦中のナチスドイツが行ったことに対して、ドイツ人自身の考えを
同僚に聞いてみたいと常々思っているのですが、なかなか気軽に聞けるものではなく
いつも迷っています。


イスラエルの管弦楽団、独バイロイト音楽祭で初演奏へ
(ロイターニュースより)

作曲家リヒャルト・ワーグナーのオペラ作品を上演するドイツのバイロイト音楽祭で、来年7月にイスラエル室内管弦楽団が初めて演奏することが分かった。ナチス独裁者アドルフ・ヒトラーに崇拝されたことから、イスラエルではワーグナーへの拒否反応が今も強く、同楽団の出演は異例と言える。


<ワーグナーひ孫>イスラエル訪問を断念 和解改めて困難

ドイツの作曲家ワーグナーのひ孫で、演出家でもあるカタリーナ・ワーグナーさん(32)が、ホロコースト(大虐殺)で犠牲になったユダヤ人との和解を求めてイスラエル訪問を計画したものの、現地で猛反発にあって訪問を断念したことが分かった。


強制収容所では、ユダヤ人がガス室に送られる際にワーグナーの音楽が
流されていたそうです。また、ワーグナー自身も反ユダヤ的な思想を持ち、
ユダヤ系の音楽家であるメンデルスゾーンなどを批判していたそうです。

そうした背景から、多くのユダヤ人はワーグナーとその音楽に強い反感を
持っており、昨年からバイロイト音楽祭の総監督となったワーグナー
ひ孫のカタリーナさんの申し出にも快く応じるわけにはいかなかったようです。
残念ながらカタリーナさんのイスラエル訪問がなくなっただけでなく、
イスラエル交響楽団がドイツに来るのも取り消しになりそうな勢いです。


このニュースを見て、ニール・ヤングが「音楽で世界は変えられない」と
言ったのを思い出しました。彼はカナダ出身のミュージシャンで、1969年の
メジャーデビュー以来多くのミュージシャンに影響を与えてきた大物であり、
また反戦や政治批判なども厭わない姿勢で知られています。


彼は2008年のベルリン国際映画祭に一本のドキュメンタリーを出品し、
そのときのインタビューで記者から「音楽で世界は変えられないのでは?」
と聞かれた際に、「音楽で世界を変えることができた時代は過ぎ去った。
今、この時代にそういう考えを持つのはあまりにも世間知らずだと思う。」
と答えました。


この発言は多くの人々に敗北宣言のように受け止められ、多くの反響が
巻き起こりました。そのため、その後すぐに彼は「一体何が世界を変えるもの
なのか探すために歌い続ける」と声明を発表しました。




彼は"何か"とは行動であると声明で述べていますが、カタリーナさんの
行動もユダヤ人との関係を変えるための"何か"であったと言えるでしょう。
音楽自体には何かを変えるための力はないのかもしれませんが、
彼女のように世界を変えようと行動を起こすときの原動力として、音楽の
存在意義の一つがあるのかなぁと考えさせられるニュースでした。