90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の脳科学に関する論文集 vol.43

Hypersensitivity pneumonitis due to molds in a saxophone player.
Chest. 2010 Sep;138(3):724-6.
Metzger F, Haccuria A, Reboux G, Nolard N, Dalphin JC, De Vuyst P.


間質性肺炎(Interstitial Pneumonia)というのは、細菌の感染によって起こる
肺炎の一種なんだそうです。この論文は、Ulocladium botrytisPhoma spという
細菌によって引き起こされたと考えられる肺炎患者のケーススタディです。


これらの細菌にどこで感染したかを調べたのですが、患者は肉体労働者ではなく、
犬やネコ、動物の類は飼っておらず、ドラッグ常用者でもなく、家も特に汚いわけ
でもなかったそうです。しかし、彼が趣味としているサックスを調べたところ、
内部から問題の細菌が検出されました。別の実験でもこれらの細菌がサックス内部で
繁殖できることが分かり、どうやらサックス演奏で細菌を吸い込んだのが原因では
ないかという事になりました。


サックスに限らず、管楽器の中は清潔に保つようにしないとカビが生えて
最悪の場合こんな肺炎になってしまうよ、というなんとも恐ろしい話でした(汗)




When music and long-term memory interact: effects of musical expertise on functional and structural plasticity in the hippocampus.
PLoS One. 2010 Oct 5;5(10). pii: e13225.
Groussard M, et al.


音楽能力の獲得と脳機能の関係については多くの研究がありますが、音楽能力と
記憶力について調べたfMRIの研究は存在していなかったそうです(ホント?)
そこで、実際の音楽からサンプリングしたメロディを刺激として使い、聴いたこと
があるかを評価している間の脳活動をfMRIで測定したところ、非音楽家と比べて
音楽家はHippocampus, Medial Frontal Gyrus, superior temporal areaの活動が
強く見られました。この音楽家優位は脳構造にも見られ、音楽家は海馬がよく発達
しているという結果が見られました。


タクシードライバーは道路の知識が豊富だから海馬がよく発達していると言いますし、
結果自体はそうだろうという感じですが、本当にこれまで研究されてないのかなぁ…