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90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の脳科学に関する論文集 vol.49

昨日、大阪で開かれている「音楽と脳」勉強会にお邪魔させていただきました。
ジャーナルクラブ的な感じでしたが、顔ぶれはけっこう多彩な感じ。
発表者の方はfMRIの経験がないにも関わらず、fMRIの論文を丁寧に
解説してくれました。まあ、論文の内容がちょっと難しすぎましたが…(汗)
それはともかく、同じような興味を持っている人がこれだけいるというのは
うれしいものです。次回もぜひ参加したいと思います。


さて、それでは気が付けばまた1週間以上も間が空いてしまいましたが、
そんなことは微塵も気にせずに今回も論文紹介です。



Functional MRI evidence of an abnormal neural network for pitch processing in congenital amusia.
Cereb Cortex. 2011 Feb;21(2):292-9. Epub 2010 May 21.
Hyde KL, Zatorre RJ, Peretz I.

以前紹介したような気もしますが、失音楽症の患者さんを対象とした研究です。
この症状は簡単に言えばピッチ変化に鈍感であるということなのですが、EEG
用いた研究からは、ピッチ変化によって生じる聴覚野の反応は健常者に比べても
それほど違いはないそうです。そこでこの研究ではfMRIを使って、失音楽症と
関連する脳部位を見つけようとしました。


メロディっぽい音列を聴かせて脳活動を測定すると、健常者でも患者でも
左右の聴覚野周辺での活動が見られた一方、患者と健常者の直接比較では
右半球の下前頭回で患者に活動低下が見られました。また、聴覚野と下前頭回
の間での機能的な結合についても患者の方が弱いという結果が見られました。


これらはEEGや解剖学的な研究とも一致することから、失音楽症患者でも
脳内でピッチの処理は行われているものの、より高次な処理のところが
うまくできていないという説を支持する結果といえます。



Functional and Dysfunctional Brain Circuits Underlying Emotional Processing of Music in Autism Spectrum Disorders.
Cereb Cortex. 2011 Apr 28. [Epub ahead of print]
Caria A, Venuti P, de Falco S.

自閉症の患者さんたちに見られる障害の一つとして、コミュニケーション
能力や共感力の低下があり、この理由の一つとして感情の情報処理能力が
低いということが言われているようです。多くの研究では、彼らのこうした
能力を調べるために顔の表情や声などの社会的な刺激を用いているのですが、
そうでない刺激でも同じ事が言えるだろうか、ということでこの研究では
音楽を使いました。


自閉症患者と健常者に楽しい音楽と悲しい音楽を聴かせて、そのときの
脳活動をfMRIで測定したところ、健常者で見られるような感情や報酬系に
関連する部位の活動が患者グループでも見られました。また、測定前に
音楽刺激の感情的な評価をしてもらったところ、患者グループと健常者
グループで評価の傾向に違いは見られませんでした。


fMRIの結果を患者群と健常者群で直接比較すると、左半球の前運動野や
小脳、前部島皮質といった部位での活動低下が見られました。島皮質は
感情的な情報処理との関連が言われるものの、前運動野や小脳については
運動制御と関連する部位なので本質的な違いではないだろうということで、
結論としては、自閉症患者でも音楽についての感情的な情報処理の能力は
比較的保たれているっぽい、ということを示しています。