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90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の記憶とEarwormの研究

How can musicians keep playing despite amnesia?
(BBCニュースより)

イギリスで指揮者をしていたClive Wearingさんはヘルペス脳炎によって
記憶に障害を受け、わずか10秒前の出来事すら思い出せなくなって
しまいました。これはかなり重篤なレベルの健忘症ですが、彼はそれでも
スコアを読み、ピアノを弾くことができるそうです。


ヘルペス脳炎は、脳内に侵入したヘルペスウィルスによって起こる
感染症ですが、主に大脳辺縁系や側頭葉内側部に病変を作ります。
側頭葉の内側部には特に記憶に関連した領域があり、ここに病変が
できることで記憶障害が引き起こされると考えられています。


彼の症状は、音楽の記憶がほかの記憶とは別の場所に貯えられて
いるという可能性を示しています。この考えを支持する証拠として
前頭葉の損傷によってWearingさんとはまた違った障害が見られた
音楽家の例や、反対に側頭葉の上側頭回を手術で切除した患者が
音楽に関する記憶を失ってしまったという報告などがあります。
ワーキングメモリの大家Alan Baddeley博士は、複数の種類の記憶
が存在すると考えると不思議ではない、と述べています。


しかしこれらの例が示すもっとも大事なことは、記憶障害に陥っても
音楽の記憶が残っていることがあり、これをうまく利用したリハビリ
を行うことで、記憶障害が回復するかもしれないということです。


この記事の後半にある、Wearingさんの妻が語る夫の姿が泣けます。
1分前の記憶すらない人生というのがどういうものか、知りたいような
知りたくないような…


The Science of Ear Worms, or Why You Can't Get That Damn Song out of Your Head
(Scientific Americanより)

ある音楽がふと頭の中に浮かんで、それがずっと耳から離れない
という経験は誰でもあると思いますが、これは英語でEarwormと
言われます。ほかにもいくつか言い方はあるようですが、最近に
なってこれに関する研究が雑誌に載るようになってきたそうです。


インターネットを使って1万人以上の人たちの年齢性別や性格など
とearwormの現れ方との関係を調べた研究や、どのようなきっかけ
でearwormが生じたかをラジオ番組への投稿から調べたりという
研究が行われ、実に様々なきっかけでこの現象がおこることが
分かってきました。またどうやらearwormを消そうとしてもあまり
効果はないようです(論文)。


先月の時点では、最もearwormとして悩まされる曲をFacebook
ページで投票してもらっていたようですが、今どうなっているか
また投票の結果についてはちょっと不明です…


ところでearwormという現象は我々もよく経験すると思うのですが、
これは日本語で何と言うのでしょうか?