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90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の脳科学に関する論文集 vol.68

相変わらずReadCubeとMendeleyの話題でアクセスしてきてくださる方々が

多いみたいで、ありがたい話です…

また何か新しいもの見つけたら、人柱してみますね。

 

 

 

Virtala P, Huotilainen M, Partanen E, Tervaniemi M.

 

またかという感じの研究ですが、和音を使ってミスマッチ反応を取り、音楽経験の有無で比較したものです。正直調べるべきものなんてもう残ってないと思うし、得られた結果についても手垢のつきまくった感じですが、一応紹介しておきます。

長調の和音列の中に挿入された短調あるいは和音の拡張形(と言うんでしたっけ?例えばドミソの和音をソドミにするやつ)によって生じるミスマッチ反応をEEGで測定しました。音楽家では反応が出たものの、非音楽家では出ませんでした。これに対応するように、ボタン押しで検出課題をしてもらうと、音楽家の方がかなり正確に検出することができていました。これは、音楽験によってこうした逸脱に対する感受性が増したと解釈できます。一方でN100の大きさについては、どちらのグループも短調の和音に対して小さくなっており、音楽経験がなくても脳の中ではある程度の長調短調の区別がついているのだろうという事になっています。

しかし、非音楽家の検出課題の成績が悪すぎる気がするのですが…
ピアノ音で単純なドミソの3和音の長調短調を区別する課題で、非音楽家の成績はチャンスレベル付近なのですよ。和音の拡張形に至ってはHit Rate = 0.24という低さ。
これはどうなんでしょうか。ちょっと信じられないなぁ。

 

 

 

 

Novembre G, Ticini LF, Schutz-Bosbach S, Keller PE.

 

他者との協調行為というのは、心理学の分野ではたぶん昔から調べられていたと思うのですが、ミラーニューロンの発見以来脳科学の分野でも、どうやって我々は他者と"息を合わせる"のか、それを明らかにする研究が多くなっています。

この研究では経頭蓋磁気刺激(TMS)で運動野を刺激し、録音したピアノ演奏に合わせて合奏をする、という課題を行いました。TMSを運動野に当てると、腕の筋肉がピクッと動きます。つまり筋電位が生じるわけですが、誰かが腕を動かしているのを見ながらこのTMSを受けると、何も見ないでTMSを受けるときよりも大きな筋電位が生じることが知られています。これは、他人の運動を観察することで自分の運動をイメージし、運動野の興奮性が高くなっていたためにTMSに対する反応が良くなったと解釈されています。この研究では、(録音ですが)他人の演奏に合わせるときには、その演奏の運動イメージを頭の中に作っているのだろう、という仮定のもと、それをTMSで邪魔してやったら見事にタイミングを合わせることが難しくなったという結果でした。

しかも実験前にあらかじめ練習しておいた曲の方が、練習していない曲よりも大きなTMSの影響が見られたことから、練習によって運動イメージが明確になりました、めでたしめでたし、という話なのですが、成績を示したグラフがちょっとしか違わないところが微妙な感じではあります。でもこの研究は発想と方法がなかなか面白かったです。

 

 

Zhou L, Jiang C, Delogu F, Yang Y.

 

Extramusical meaningという言葉を、Stefan Koelschの「Brain and Music」という本以外で初めて見ました(笑) 


「外音楽的な意味」という訳になりますが、Koelschによると「iconic, indexical, symbolic の三つの次元を持ち、外界を参考にして音楽の記号的性質を解釈することで生じる意味」などというよく分からないことになっています。特にiconicな意味というのは、スメタナ交響詩モルダウ」で川の流れを表す音型や、あるいは「暖かい音」「鋭い音」といった言葉で表現される何かしらの概念的な意味のことを表しています。


この研究では、こうした音楽が持つ概念的な意味について調べました。脳波では、文章の意味がおかしい場合に特徴的なN400という波形が見られることが知られています。ところが音楽が持つこうした意味についてはまだよく分かっていません。そこで、EEGをつけた被験者に絵を見せながら音楽を聴かせ、絵と音楽とが持つ概念的意味が合う合わない(明るい絵と暗い音楽といったものでしょうか?)によってN400が生じるかを調べました。すると絵と音楽で意味が合わない場合に大きなN400が見られたそうです。そしてこれは刺激(おそらく音楽と絵の)提示間隔を200ms, 800ms, 1200msと振ると、一番長い1200msではN400が見られなかったことから、こうした概念的な意味の処理が早い段階で自動的に行われている、としています。ちょっと自動的というのがどんな理由で出てきたのか分かりませんが、ふーん、という感じです。