90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

小さいからといってバカにはできません。

Bigger not necessarily better, when it comes to brains
(EurekAlert!より)


体が大きい動物は概して脳も大きいですが、今まで信じられてきたよりも脳の
大きさと知性の高さに関係はないのでは?というレビューを紹介した記事です。


動物によって脳の大きさはそれぞれ違いますが、例えばクジラの脳は9kgあり、
神経細胞は約2000億個あるんだとか。それに対して人間は約1.5kgで約850億個、
ミツバチに至っては重さは1mgもなく、細胞の数も100万個以下だそうです。





しかしマッチ棒の先のような小さい脳であっても、ミツバチは女王バチを頂点と
する社会性を持っていますし、8の字ダンスとして知られるコミュニケーション
能力も備えていたり、違う角度から見た人間の顔を同じものと認識したり(これ
様々な能力を持っています。


昆虫を使った研究からは、こうした能力が驚くほど小規模の神経細胞集団で
成立している事が分かってきたそうです。では大きな脳は何のためにあるのか?
という疑問が出てきますが、体が大きければ歩行のバランスを取るのも難しい
でしょうし、感覚器官から入ってくる情報の量も多くなりそうです。知性という
よりもむしろ、そうした大量の情報を正確に処理するために大きな脳が必要に
なるのではないか、というのが著者のChittka教授のアイデアです。実際、
大型動物の脳内では、同じような神経回路の繰り返しが多く見られるそうです。


Chittka教授は「コンピュータで例えると、大きい脳というのは高性能のCPUと
いうよりも、むしろ大容量のハードディスクという事もできる」と述べています。
逆に言えば、わずかな容量の脳でも複雑な行動が可能であるという事は、AIや
人工知能の研究者にとって、より高性能のコンピュータを可能にする大きなヒント
が隠されているのかもしれません。また、それ以外にもこれまで思いもしなかった
技術が生まれる可能性も十分ありそうです。


なにげに昆虫の脳の働きについてはとても興味があったりします。
人間の脳を調べるよりも役に立つ発見がありそう…