音楽の研究に関わる書籍のご紹介
Natureのwebサイトで音楽関係の本について書かれていたのでご紹介。
著者は英国ローハンプトン大学のアダム・オッケルフォード教授で、音楽教師をしていた彼が出会った自閉症児や盲目の子どもたちの優れた音楽能力と、そうした能力が彼らに備わった理由について音楽理論や心理学、彼の仮説(Zygonic theory)を絡めて書かれているようです。
彼によると、自閉症児や盲目の子どもたちが持つ高い音楽能力は絶対音感によるものが大きいということです。なんでも、西洋人の健常者で絶対音感を持つ人は1万人に1人しかいない一方で、自閉症児では13人に1人(約8%)と急増し、幼い頃から盲目の人たちに至っては約45%の保有率だとか。
本の中身については、音楽の知識があることが前提となっていたり、音楽と言語の関係を指摘しながらAniruddh Patelの有名な本「Music, Language, and the Brain」を1回しか参照していなかったり、Deutschのspeech-to-song illusionについて言及していなかったりと、あまり親切ではないようです。Natureのサイトでこの本を紹介していた人も、対象とする読者層がはっきりしないと書いており、別の本も読むことをお薦めしています。
ちなみに彼は、教え子の一人であるデレク・パラヴィチーニと一緒にTEDx Talksに出演しています。
最初に予想したよりもお薦めできる内容ではないっぽいので、おまけとして音楽研究に関わる本をいくつか紹介してお茶を濁すとしましょうか。ずっと前にも紹介したような気もしますが…
英語だと以下の3冊でしょうか(ほかにもあるけど読んでないのでわからない…)
Music, Language, and the Brain
上でも言及されていたPatelさんの本
The Cognitive Neurosceince of Music
音楽の神経科学といえばこちら。研究者なら持っておくべき教科書的な本ですね。なぜかResearchGate経由でダウンロードできるんですが…汗
Brain and Music(日本語訳はこちら)
Koelschさんの本。脳波やMEGを使っていて音楽研究に興味があるなら知っておくべきですね。翻訳を手伝った者としてはぜひ日本語版を買ってください(笑)
専門に研究する人でなくてもいけるのではないかと思うのが以下の5冊。
ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム | 古屋 晋一 |本 | 通販 | Amazon
言わずとしれたベストセラー。こういう話の論文をよく読んでいたので気づかなかったですが、一般向けの本って意外となかったんですね。
ご存知の人も多いオリバー・サックス先生が、いつものように患者の話をドヤ顔で語る本です。
英語版を買ってモタモタしていたら翻訳版が出てしまいました。もともと音楽プロデューサーだった人なので、ミュージシャンの名前がけっこう出て来るのですが、あまり詳しくない私にはすごさがよくわからない…
「歌」を語る 神経科学から見た音楽・脳・思考・文化 (P-Vine Books) | ダニエル・J・レヴィティン, 山形浩生 |本 | 通販 | Amazon
同じくLevitinさんによる本。
気軽に買ったら辞書なみに分厚くて困っています(笑)そのためまだ読んでません…
音楽の起源や進化といった話に興味があるならこちらを。
Hmmmmmという原始的なコミュニケーションから言語や音楽が進化したという面白い仮説を述べてます。それほど難しい話もなく、面白く読めた記憶があります。また読み返してみようかな。
こちらは2000年に出版されたThe origin of Musicの翻訳。音楽の起源に関わるであろう研究をけっこう広い分野から集めているので、専門知識はけっこう要求されますね。中には無理やり音楽に近づけた感じのものもありますが。翻訳版は上下巻に分かれており、しかも現在まだ下巻は出ていない様子。
本の資料集として出版社のwebサイトが作られており、これがかなり充実してます。