90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の神経科学に関する論文集 vol.13

Musical training influences linguistic abilities in 8-year-old children: more evidence for brain plasticity.
Cereb Cortex. 2009 Mar;19(3):712-23.
Moreno S, Marques C, Santos A, Santos M, Castro SL, Besson M.


音楽の訓練によって、脳は構造と機能の両面で変化します。この機能的な変化は果たして
音楽に関連した活動にだけで見られるのか、あるいは音楽とは関係ない活動に対しても
影響を与えるのかを調べた研究です。先行研究としては、計算に用いる脳部位が違うとか、
指揮者は空間認知能力が高いとかありますが、正直なところ副産物というか、あまり研究の
方向性としては重要でないような気がします。


それはさておき、実験では8歳の子供達32人を対象にして、6ヶ月間の音楽訓練もしくは
絵画訓練を行う前後で言語課題(読みや音声のピッチ判断)の成績を比べたところ、
音楽訓練を行った子供達のほうが成績が良くなりました。またERPにも特徴的な波形が
見られるようになったということです。例え短期間であっても、音楽訓練が音楽だけで
なくほかの認知能力にも良い影響を与えるようです。




Psycho-physiological responses to expressive piano performance.
Int J Psychophysiol. 2009 Dec 15. [Epub ahead of print]
Nakahara H, Furuya S, Francis PR, Kinoshita H.


ピアノ演奏中の感情表現がピアニストの感情にどのような影響を与えるのかを、心拍や
呼吸、発汗といった自律神経系について調べたものです。感情表現あり/なしの条件で、
感情的な方が自律系の反応は高くなりました。また、演奏中の体の動きを制限させても
あまり違いは見られず、演奏中の感情表現はピアニストの感情にも影響を与えるようです。


面白いですね。感情表現によって感情的な変化が生じる、と考えるのが正しいでしょうが、
逆の可能性もありそうです。また、演奏を聴く側にも被験者を用意して、彼らの自律系の
反応とピアニストの反応との関連性を見てみたら、面白いんじゃないでしょうか。