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90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の脳科学に関する論文集 vol.28(訂正あり)


A review of Savant Syndrome and its possible relationship to epilepsy.
Epilepsy Behav. 2010 Feb;17(2):147-52. Epub 2010 Jan 13.
Hughes JR.


サヴァン症候群についてのレビューです。ダスティン・ホフマンが映画「レインマン」で
演じたことで有名ですが、自閉症や知的障害を持ちながら、日付を正確に覚えていたり
一瞬で物の数を把握したり、一度聴いただけの音楽を間違えずに演奏したりといった
一部の分野に驚異的な能力を示す人たちを指します。


このレビューによると、サヴァンにも先天的なものと脳障害などによる後天的なものが
あるようで、後天的なサヴァンには、特に左半球のfrontotemporal areaに障害が
起きた人が多いそうです。さらに健常者を対象にTMSを使ってこの領域の活動を抑えた
ところ、半数の人たちに新たな能力が見られたとか。


これらの先行研究のほか、サヴァンの驚異的な能力が生じる脳内メカニズムや、
健常者での能力向上の可能性などについて書かれているようです。


面白そうだけど、TMSで健常者の能力が向上とか、ちょっと間違えると
アブない方向へ行きそうな…




Structural changes in cuticles on violin bow hair caused by wear.
Biosci Biotechnol Biochem. 2010 Feb 23;74(2):408-10. Epub 2010 Feb 7.
Yamamoto T, Sugiyama S.


バイオリンなどの弦楽器は馬の尻尾から取った毛を弓に張って使います。
髪の毛と同じように尻尾の毛もキューティクルがあるので、貼りたての毛はツルツルです。
いくら弦をこすっても音は出ません。面白いくらいに。


松ヤニをつけて摩擦を増やして弦をこすることで初めて弦が振動して音が出るのですが、
長くても数年で摩擦力が落ちてきます。新しい毛と古い毛でどれだけキューティクルに
違いが出てくるのかを、原子間力顕微鏡を使って原子レベルで見てみた、という研究です。
すげぇ。


(訂正前)
結果、新しい毛は使う前に脱色や脱脂をしているので、それによる荒れがすでに
見られるそうです。で、使っていくうちにさらに荒れていく、ということがわかりました。
そ、それだけ!?


(訂正後)
取り立て(?)の馬の毛はきれいなキューティクルなんですが、弓に使う前には
脱色や脱脂を行うため、新品の弓でも毛のキューティクルはすでにある程度
荒れています。さらに使い込むことによって、キューティクルには削れや折れ、
穴などが見られるようになってきます。これは、今まで考えられてきたような、
弓と毛のこすれ合いによってキューティクルが均一に減っていくイメージとは
異なる現象も起こっていることを示唆しています。




A Role for the Intraparietal Sulcus in Transforming Musical Pitch Information.
Cerebral Cortex 2010 20(6):1350-1359
Nicholas E. V. Foster and Robert J. Zatorre


メロディの識別課題を行っている最中の脳活動をfMRIで測定したら、相対音感に
関連していると思われる脳領域が見つかりました、という研究です。


転調したメロディを使った課題において、単純なメロディの識別時よりも両側のIPS
での活動が大きく見られた、ということです。どうやら音楽家も非音楽家も同じ様に
IPSの活動と課題の成績が相関していたようで、音の高さに限定されない高次の
音楽処理にIPSが関与していると考えられます。


絶対音感の研究はけっこうありますが、相対音感についての研究はそれほどない
ような印象があります(実際のところはよく知りませんが…)
でも、むしろ相対音感の方が音楽家に限らず誰でも持っている能力なので、
こちらのメカニズムの解明の方が重要な課題なのかも。