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90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の脳科学に関する論文集 vol.42

Effect of different frequencies of music on blood pressure regulation in spontaneously hypertensive rats.
Neurosci Lett. 2010 Oct 4. [Epub ahead of print]
Akiyama K, Sutoo D.


広い意味ではモーツァルト効果の検証ということになるのでしょうか。
これまでの研究で、モーツァルトの音楽を聴かせると脳内でのドーパミン量が
増加することが知られているそうです。また、ドーパミンの増加が血圧を下げる
働きがあるそうで、これらの事から、モーツァルトの音楽に降圧作用があるのでは
という仮説を検証しています。


モーツァルトの音楽をいくつかの周波数帯でフィルターして、高血圧のモデルラット
SHR)に聴かせたところ、生の音楽(フィルターなし)と4k-16kHzでフィルターした
音楽では血圧の低下が見られました。また、4kHzよりもフィルターの周波数が低く
なるほど低下の度合いは少なくなり、4k-16kHzという周波数帯の音が脳内のドーパミン
合成を刺激しているのではないか、という結論です。

ラットの可聴域は70kHzにまで到達するようですが、30〜40kHzが最も感受性が高い
そうです(参考)。今回の実験ではこの周波数帯でフィルターはしていませんが、
それに近いほど効果があるという可能性も考えられるのではないでしょうか。




A Systematic Review of Randomized Controlled Trials Using Music Therapy for Children.
J Altern Complement Med. 2010 Oct 9. [Epub ahead of print]
Mr X00e1 Zov X00e1 M, Celec P.
(筆頭著者の名前が変になってますが…)


子供を対象とした音楽療法について報告した論文28本をメタ分析したところ、参加者
の数や統制群のデザインなどの点で、方法論的に問題のある研究が多かったという
レビューです。もっと証拠に基づいた医療(Evidence-Based Medicine)や実験の再現性
について厳しく研究を行う必要がある、と結論しています。


アブストラクトでこれだけダメ出ししている論文も珍しいんじゃないでしょうか。
でも実際の現場では、研究室で実験するときのようなキチンとした実験デザインを
組むのは難しいと思います。


以前、音楽療法の患者さんを実験に呼んだことがありますが、どんな事を治療として
行っているかを聞いたところ、患者さんの好きな音楽を集めたCDを渡されてそれを
1日1回は聞くように言われたというものだったり、週に1回病院に来て30分程度の
セッション(歌を歌ったり音楽に合わせて体を動かしたり)を大勢で受ける、といった
単純なものでした。


これでは参加者のやる気によって研究の質が変わってくるので、参加者を変えたら
結果も変わるという可能性がかなり高くなります。かと言って、参加者を毎日
呼び出してみっちり1時間マンツーマンでセッションする、なんていうのも無理な
話ではありますが…


そこら辺をどう解決していくかが、音楽療法がさらに普及していくためのカギに
なってくるのかもしれません。