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90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

「日本の科学は世界を目指さない」という方向性が示された、という事でしょうか。その2

あまりしつこく追ってもしょうがないですが、13日の事業仕分けについて
論点等の説明シート評価コメントがアップされていたので、見てみました。
(共にリンク先はPDF)

<総論>
・いずれの制度も、若手研究者の生活費や研究費に充てられる経費であり、
 重複しているのではないか。
・若手研究者向けの国費投入について、成果目標は明確か。また、成果の
 検証は行われているか。


ここでは重複が悪い事のように書かれていますが、支援する範囲がかぶって
いてもその目的が違う以上、問題がないように思われるのですが・・・
また、成果目標と成果の検証については、文科省による配布資料にはっきりと
書いてあります。まあそれはさておき、各論については以下の通りです。

【科学技術振興調整費(若手研究者養成システム改革)】
・従来の徒弟制度を残したまま、新しい人事制度を国費負担で追加的に
 実施しても意味はないのではないか。
・国が費用を負担して大学に改革を要請するという方法は、妥当か。
・米国型の人事制度を導入する事業であるが、我が国において最も相応しい
 制度の在り方について十分検証がなされているか。


若手研究者養成システムについては、確かにいくらテニュアトラックを経験しても、
結局上の方が動かなければいつまで経っても教授准教授にはなれないわけで、
テニュアを増やすよりもまず先に大学・研究所における昇進システムを改善すべき
なのでしょう。こうした「米国型」が日本に合っているのか?という点については、
最近いわゆるCNSやその他トップジャーナルに日本人の名前を多くみるように
なった気がするので、一応合っていると言えるのではないでしょうか。

【特別研究員制度】
・昭和60年から実施され、支援対象人数が毎年7,000人にも上っているが、
 支援を受けた者について、追跡調査などにより、成果の検証がなされているか。
・支援人数を増やしてきた結果、本来民間で活躍できた博士研究員(ポストドク
 ター)が、そうした機会を逸することになっていないか。
・本事業のほかにも、大学の研究費等により優秀な若手研究者を雇用することが
 可能であり、本制度の対象は、極力絞り込むべきではないか。


特別研究員については、iPS細胞の山中教授や免疫の審良教授のほか数多くの学長、
財界人もその恩恵を受けており、成果としては大きいのではないでしょうか。本来は民間で
活躍できたポスドクの機会を失わせているという批判は、タカラや住友の社長のような
民間人がもらっていた事実を考えれば的外れと言えるでしょう。また、この事業を減らした
からといって民間への就職が増えるはずもなく、これは企業側の姿勢を変えなければ
どうにもなりません。

科研費の若手研究支援等】
・長年実施されている事業であるが、成果目標は明確か。追跡調査等により成果
 の検証は行われているか。
・40歳前後の研究者まで対象としているが、妥当か。
・若手研究者であっても優秀な研究者であれば、一般の競争的資金の獲得が可能
 ではないか。若手研究者に限った支援制度は妥当か。


若手向けの科研費は、より大規模な基盤研究への足がかりという位置づけであり
ほとんどが研究者が1人で行う低予算のものです。にも関わらず平成19年には18万件
以上の論文が発行されているという現状ですら、まだ不十分だと言うのでしょうか。
また、研究者としてスタートするのは20代後半という事を考えると、40歳でも経験年数は
10年ちょっとであり、まだ若手と呼ばれてもいいのではないでしょうか。それに研究の
多様性という観点からすれば民間企業から移ってくる人もアリでしょう。そういう人なら
40歳でも経験は数年、という事もあります。ここは年齢ではなく経験年数で判断するような
システムを作るべきなのでしょう。最後の批判は、どういう基準で競争的資金の採用が
決まるのかを知らない全くの素人的意見であるとしか言えません。こうした研究費は
これまでの業績が重要になってくるわけで、いくら優秀と言ってもまだ業績が少ない
若手研究者が教授准教授と対等に戦えるわけがありません。若手向け科研費
そうした不利な立場を考慮した研究費である、という前提がある事を忘れてもらっては
困ります。



こうした論点を受けて事業仕分けが行われた結果のコメントがこちらです。

とりまとめコメント:
評決の結果は、予算要求の1/2から1/3縮減という方が6名おられた。さまざまな
意見が出されたが、コメントの中に、「ポスドク生活保護のようなシステムはやめるべ
き。本人にとっても不幸。」「教員免許をポスドクに付与する政策を検討すべき。」などの
意見があったことを付しておきたい。若手研究者育成の競争的資金については、予算
要求は縮減して、中身も見直してもらいたいという結果としたい。


ポスドク生活保護・・・ そうしたものが必要になる理由についても考えをめぐらして
欲しかったですが。配布資料やコメントを読む中で、今までの研究のやり方に問題点
がある事は浮かび上がってきました。しかし予算が削減される事で問題点を解決する
体力もなくなりそうな気がします。しかも来年も同じように仕分けられたら・・・
ああ、考えただけでも恐ろしい。