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90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の脳科学に関する論文集 vol.25

The amusic brain: lost in music, but not in space.
PLoS One. 2010 Apr 21;5(4):e10173.
Tillmann B et al.


このブログでも何度か紹介していますが、Amusia(失音楽症)と呼ばれる障害が
あります。主にピッチ処理が困難になる障害のようですが、先天的なものと
脳梗塞などによる後天的なものがあり、前者は人口の約4%を占めるようです。


しかし、失音楽症は空間的な処理の障害が原因とする報告が以前されました。
失音楽症患者は心的回転課題の成績が悪く、また健常者において2音の音高を
判断する課題に反応ボタンの空間的な位置関係が影響を与える事が知られて
いますが、失音楽症患者にはその影響も見られなかったそうです。


そこでこの論文では、半側空間無視の患者において空間的な情報処理の
障害の程度を調べるのに使われるline bisection task(線分二等分課題)を
使って、失音楽症の患者における空間的な情報処理の精度を調べました。


結果は健常者と違いが見られず、それを受けて行った心的回転課題の追試でも
先行研究のような健常者との違いは見られませんでした。このことから、
失音楽症は空間的な情報処理とは関係なく、ピッチ処理に選択的な障害で
あると主張しています。


先行研究との違いについては、実験デザインを変えたことによって統計的な
検定力が上がったからだという解釈のようですが、それだけで済むものなので
しょうか。あるいは、空間的な情報処理の障害が引き起こす失音楽症と、
そうでないものとが存在するのかもしれません。




Perinatal exposure to music protects spatial memory against callosal lesions.
Int J Dev Neurosci. 2010 Feb;28(1):105-9. Epub 2009 Sep 6.
Amagdei A, Baltes, FR, Avram J, Miu AC.


ちょっとエセっぽくて何なんですが、音楽はげっ歯類の脳の発達に影響を
与えるそうです。これは音楽が海馬における神経新生やホルモン分泌などを
促すからと考えられているんですが、この論文では左右の脳をつなぐ脳梁を
切除したラットで見られるspontaneous alteration deficitsが音楽を聴かせることで
抑制されたということです。