90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の脳科学に関する論文集 vol.26

Rhythmic engagement with music in infancy.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Mar 30;107(13):5768-73. Epub 2010 Mar 15.
Zentner M, Eerola T.


音楽を聴いているとついつい体が動いてしまう、という経験は多くの人があると
思いますが、最近の報告(これこれ)ではリズムパターンを聴くだけでMotor cortexや
Premotor cortexに活動が見られるそうです。


しかしこれはそれまでのダンスの経験や何らかの学習によるものかもしれません。
そこでこの研究では、5ヶ月〜2歳までの幼児を対象として、音楽、音楽から取った
リズムパターン、そしてコントロールとして会話の声を聞かせているときの、
子供がリズミカルに動いている時間を測定しました。


その結果、会話を聞いているときと比べ、リズムパターンや音楽を聴いているとき
にはリズミカルに動く時間が多くなる事が分かりました。またテンポの違いにも
ある程度は対応している様子も伺えたことから、特にダンスを習ったことのない
幼児でも"リズムに乗る"行為は生得的に備えている可能性が考えられます。


以前紹介したように、オウムでさえリズムに乗った動きが出来るんですから、
赤ん坊に出来ても不思議ではないですね。これらは音のリズムでしか調べられて
いないですが、聴覚だけで見られる傾向なのかそれとも周期的な刺激というのが
カギなのか、フラッシュなどの視覚刺激で調べてみても面白いんじゃないでしょうか。




Contributions to singing ability by the posterior portion of the superior temporal gyrus of the non-language-dominant hemisphere: first evidence from subdural cortical stimulation, Wada testing, and fMRI.
Cortex. 2010 Mar;46(3):343-53. Epub 2009 May 18.
Suarez RO, et al.


てんかん患者の手術前に、脳に直接電極を挿して言語と歌唱の脳機能局在を
調べた研究です。dominant(てんかんの焦点がある脳半球のこと?)のpSTGを
刺激したら、何人かの患者は話すことに影響が見られたものの歌うことには
影響が見られませんでした。反対側のpSTG刺激では逆に歌がダメになり会話は
大丈夫でした。dominantな方のIFGを刺激すると会話と歌の両方がダメになり、
反対側のIFG刺激ではどちらも大丈夫でした。


特定の条件下とはいえ、こうした方法も使えるでしょ?という話ですが、
ホントに"rare opportunity"ですよね。すごい力技。