読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

90番目の夜

音楽と脳の研究紹介や、文献管理ソフトの人柱報告などしています。

音楽の脳科学に関する論文集 vol.65

科研費のシーズンですね。私も今年は本気で取り組まないと・・・

 

Frontiers in Human Neuroscience 2014 Sep 3;8:694.(Free access)

New learning of music afetr bilateral medial temporal lobe damage: evidence from an amnestic patient

Valtonen J, Gregory E, Landau B, McCloskey M.

 海馬は記憶の座として有名ですが、海馬の損傷によって健忘症となり、新しい物事の記憶が難しくなる一方で、単純な動作を覚えたりすることは大丈夫だそうです。それでは楽器の演奏は覚えられるのか?ということで、海馬がほぼ完全に切除されたアマチュアのバイオリニストを対象にして、新しい曲を練習してもらったというケーススタディです。

 

ケーススタディなので結果もあっさりとしていますが、結論を言えば新しい曲を弾けるようになったそうです。面白いのは、同じ曲を何度も練習している事を患者さん自身は覚えていないというところですね。海馬損傷でも単純な動作が覚えられるというのは先行研究でも報告されていますが、今回の結果は、複雑な運動学習でも海馬に依存しない形で記憶される、という大変面白い可能性を示唆しています。


 

Frontiers in System Neuroscience 2014 Aug 28;8:149.(Free access)

Is there a tape recorder in your head? How the brain stores and retrieves musical melodies

Rauschecker JP.

 脳がどのようにして音楽を保持しているのか、ということについての論文というか仮説の表明みたいなものです。サルの電気生理で大御所のRauschecker教授が書かれていますが、テープレコーダーの仕組みについて段落を一つ設けて説明していたり、それがWikipediaからの引用だったりと、ふだん読むような論文とは一味違いますw

 

イメージングの研究からは、premotor cortexを含むdorsal streamに音楽が保存されているんじゃないか、という証拠が示されているのですが、サルではここら辺の部位が運動学習に関連しているので、おそらく音楽は運動情報に変換されているのではあるまいか?、というアブストラクトだけを読むとハテナマークが浮かんでくるような話です。真面目に本文を読めば面白いのかもしれませんが…

 

 

J Neonatal Perinatal Med 2013 Jan 1;6(4):295-301 

Effect of lullaby and classical music on physiologic stability of hospitalized preterm infants: a randomized trial

Amini E, Rafiei P, Zarei K, Gohari M, Hamidi M.

 

 癒やしとしての音楽は色々なところで使われていますが、早産の赤ちゃんに対してはどうかというのを、子守唄とクラシック音楽で調べた研究です。1000~2500gの小さな赤ちゃんに対して子守唄、クラシック音楽、音楽なしを2日間ずつ経験させて、その間の心拍、呼吸数、血中の酸素濃度を比較しました。子守唄を聴かせると心拍・呼吸数ともに有意に低下し、これらは音楽を止めても低下が続きました。一方、クラシック音楽でも心拍数の低下は見られたのですが、音楽を止めると有意差はなくなりました。これらの結果は、音楽を聴かせることで赤ちゃんのストレスを軽減することができるということを示唆しています。

 

どんなクラシック音楽を使ったのかは本文を読まないと分かりませんが、子守唄の方が効果が長続きしたというのは面白いですね。