音楽の脳科学に関する論文集 vol.15
Don't stand so close to me: the effect of auditory input on interpersonal space.
Perception. 2009;38(4):617-20.
Lloyd DM, Coates A, Knopp J, Oram S, Rowbotham S.
人は誰でも自分だけの空間というのを多かれ少なかれ持っていて、その中に他人が
入ってくると嫌な気分になるものですが、イヤホンで音楽を聴いている状態では
その空間の範囲が普段より広くなる、という研究です。スピーカーから音楽を
聴く場合だと変化は見られなかったことから、イヤホンをする事で外界の音が
聞こえなくなり、その分警戒心みたいなものが働いて他人との距離を取るようになる、
という解釈のようです。
イヤホンをつけて音楽を聴いている人の中には、自分だけの空間を作りたいという
気持ちもあるんじゃないかと思うのですが、イヤホンをすることで無意識に他人との
距離を取るようになり、必然的に自分だけの空間を作りやすくなる、ということに
なるのでしょうか。
Cultural constraints on music perception and cognition.
Prog Brain Res. 2009;178:67-77.
Morrison SJ, Demorest SM.
以前オンライン公開の段階で紹介したような気もしますが、音楽研究における文化の
重要性についてのレビューです。これまでの音楽知覚や認知の研究はほぼ99%が西洋音楽、
クラシック音楽に偏ったものでした。しかし世界には邦楽やインド音楽のように様々な楽器
に様々なスタイルの音楽があり、文化が音楽知覚に与える影響は無視できません。
最近になってようやくそうした文化の違いに注目した音楽の脳科学研究が始まってきたので
このレビューはけっこう重要なものではないでしょうか。時間があれば読んでみたいです。