トークを聞きました。
現在マックスプランク研究所には若手をリーダーとした小さな研究グループ
がいくつかあります。その中の一つに音楽認知を研究するグループがあり、
そこのリーダーであるDr. Peter Kellerは数週間に一度の割合で国外から
音楽関係の研究者をトークに招いています。Aniruddh Patel博士など、
日本では一度も見たことのない有名どころのトークを聞く機会が多くて
大変うれしいです。
今日はエジンバラ大学のDr. Nikki Moranのトークを聞いてきました。
彼女は大御所というよりは若手に入りそうな感じですが、音楽家としての
教育と研究者としての教育の両方を受けた人で、今日のトークは演奏者間の
コミュニケーションについてという、主に彼女の博士課程のテーマについてでした。
彼女は、シタールというギターのような楽器とタブラというタイコのデュオで
演奏するインドの伝統音楽を対象に、演奏中の奏者間のアイコンタクトや
ボディランゲージなど非言語的なコミュニケーションをビデオに撮って分析したり、
演奏者にインタビューをする方法で研究を行っています。
この音楽はジャズのように途中でソロの即興部分があるそうで、演奏中の
円滑なコミュニケーションは重要なものになっています。演奏者に対する
インタビューからは、主にテンポの調整についてコミュニケーションしている
という回答が多かったそうです。また、相方が次にどう演奏するかを予想
するためにも、アイコンタクトやボディランゲージなどを使っているそうです。
そして、アイコンタクトについてビデオで目線の方向やその頻度を分析したところ、
一度のコンタクトで相手を見ている長さは大体1.5〜3秒くらいだったそうです。
また、そうしたコミュニケーションは行うタイミングが重要だと語っていました。
分野としては脳科学ではなく、むしろフィールドワークみたいな感じの方法を
用いているので多少毛色は違うのですが、音楽をコミュニケーションという
視点から見るという点では方向性が私と似ているので、非常にわかりやすく
面白いトークでした。
彼女は「musical communication = social interaction」みたいなことを言って
いましたが、以前紹介したPatel博士も、最近トークに来たIan Cross博士も
「Music is social process」と言っており、演奏者間のコミュニケーションに
ついて語っていました。音楽研究にも流行があるとすれば、社会性というのが
今の流行なのかもしれません。