音楽の脳科学に関する論文集 vol.71
なんと先月のPVが1,000を越えていました!こんな大したことのないブログにたくさん来ていただいてありがとうございます。まだブログを書く余裕が残っているので、もう少しはがんばりたいと思います。
さて本日は脳機能測定のお話を3本。
聴性脳幹反応(Auditory Brainstem Response: ABR)は、音が聞こえてから数ミリ秒~数十ミリ秒の間に生じる脳幹部の反応で、聴覚野などとは異なり、音の物理的な性質を反映すると言われています。なので、例えば音の波形に応じた波形の反応が見られたり、その反応波形をスピーカーに流すと元の音が再現できるとか言われています。これは特に周波数追従反応(Frequency-following response: FFR)と呼ばれていますが、この反応が生じる神経メカニズムはよく分かっていません。
この論文では、言語刺激で生じたFFRの頭表分布や発生源推定、ABRから予測されるFFRとの比較など色々使ってこのメカニズムを調べました。するとFFRの発生源は中脳に推定され、ABRとは異なるものであること、耳朶周辺で見られたFFRはより末梢に近い部位で生じたものと解釈されました。
…が、この論文はいくつか疑問があって、まずは耳朶電極でFFRが見られているんですがそんなことがあるんでしょうか。そして発生源が脳の深部にある場合はMEGを使っていても疑わしいのに、MEGより空間分解能が悪いEEGで脳幹に発生源と言われてもどれだけ信頼性があるのか疑問です。さらに、ABRはとても小さいので筋電が入らないように気を付けるはずなんですが、この実験では測定中に字幕付きの映画(音なし)を見せています。ということは眼筋由来のノイズが入りまくってとても汚ないデータになっているはずで、うまく結果は出ていますが、実験のやり方がこれでいいのか非常に疑問ですね。
日本語の論文です。T1画像とT2画像での灰白質の髄鞘の比率を求めたとのことですが、不勉強なもので、この比を使って何が言えるのかわかりません…
とりあえず、この比率と聴音テストの成績との関係を見たという論文です。アブストだけでは詳しく分かりませんが、このテストだけで相対音感を調べたというのは言いにくいんじゃ…
音楽における即興についてのレビューです。ジャズ、クラシック、フリースタイルラップの音楽家、そして一般人を対象としたfMRI研究に焦点を当てて前頭葉のネットワークの重要性を述べています。そしてPressingという人がモデルを提唱しているようなのですが、それとの関連性についても議論しています。そういえば邦楽系で即興ってあるんですかね。
論文紹介と人柱報告以外もしたいのですが、なにぶん地方住まいなのと、この時期は学会も少ないのであまりネタがありません。そういえば今年行われる学会を紹介するという手があったなぁ。あとは海外ニュースでも探しますか…